在宅勤務手当と割増賃金
- 2024.08.08 コラム
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はじめに
残業代等割増賃金を計算する際の基礎となる賃金は、法律で「除外してもよい手当」が決められており、それ以外の手当は算入しなければならないとされています。しかし、在宅勤務の普及に伴って支給されるようになった「在宅勤務手当」の取り扱いに実務上問題が生じていました。
この度割増賃金計算における在宅勤務手当の取扱いについて、算定基礎から除外できるケースが明確になりましたので、内容について解説します。
割増賃金計算から除外できる手当
現在は「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」を、割増賃金計算から除外できます。
その理由は、それらが労働との直接的な関係が薄く、個人ごとの事情によって実費弁償的に支給されるものであるためです。
そのため、例えば名称が住宅手当であっても、実費によらず一律支給されるものは除外できません。
在宅勤務手当とは
在宅勤務手当(テレワーク手当)とは、在宅勤務に伴って発生する水道光熱費や通信費等を補填する目的で支給する手当で、コロナ禍でにわかに普及しました。
支給方法は様々ですが、日額100円〜150円や、月額3,000〜5,000円程度に定めるケースが多いようです。
算入しない場合とは
本題ですが、在宅勤務手当を割増賃金の計算基礎に含めないこととするためには以下の要件を満たす必要があります。
① 就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示されること事
② 在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法であること
実費弁償分の計算方法
在宅勤務における実費とは主に「水道光熱費」「通信費」「事務用品等の購入費」ですが、その計算は以下の方法が考えられます。
① 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(国税庁FAQ)で具体的な計算方法が示されています。(QRコード参照)
実費 × 在宅勤務日数 / その月の暦日数 × 1/2
1/2の根拠は、1日の法定労働時間8時間は、24時間から睡眠時間8時間を控除した16時間の半分であることからです。
② ①の一部を簡略化した計算方法
これは、過去3ヶ月程度の平均実績をもとに①の方法で実費を計算して1ヶ月あたりの手当額を決め、以後固定額で支払う方法です。
1回決めて終わりでなく、適宜見直す必要があります。
③ 実費の一部を補填するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
これは、上記のような計算式で求める実費よりも低くなるように在宅勤務手当の単価を設定する方法です。
実費よりも常に低い金額を支給するのであれば定額であっても実費弁償的であると言える、という理屈からです。
なお、既に割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当を算入しないことにする場合、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、労使で話し合って慎重に変更すべきでしょう。
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