心理的負荷による精神障害労災認定基準の改正について
- 2024.02.07 コラム
さくら社会保険労務士法人では、愛知・名古屋を中心に労務問題対応、就業規則作成、勤怠管理システム導入、助成金の提案など人事労務分野の各テーマ別ノウハウに基づいてご支援をさせていただくことが可能です。上記テーマ等でお困りの会社様は、是非一度当法人にご相談ください。
はじめに
精神障害・自殺事案については、2011(平成23)年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定が行われてきましたが、近年の社会情勢の変化等を考慮し、厚生労働省は最新の医学的知見を踏まえ同基準を改正・発表しました。
今後は改正された認定基準に従って労災補償がなされることになります。
以下、改正のポイントを解説します。
認定基準改正のポイント
【1. 業務による心理的負荷評価表の見直し】
実際に発生した業務による出来事を「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価するための表(心理的負荷評価表)が見直しされ、具体的出来事の追加、類似性の高い具体的出来事の統合等が行われました。
追加となった項目
- ・「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)
- ・「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」
また、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例が拡充されました。
パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことが明記されたほか、一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例が明記されました。
パワハラと労災の因果関係を調査する拠り所がより詳しく明確になったということでしょう。
【2. 精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し】
改正前の基準では、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務起因性を認めなかった部分について、改正後は悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認めることが示されました。
精神障害の労災認定の可能性を拡大させる改正と言えるでしょう。
【3. 医学意見の収集方法を効率化】
自殺事案や、心理的負荷が「強」かどうか不明な事案などについては、専門医3名の合議による意見収集が必須とされていましたが、改正後は「特に困難なものを除き専門医1名の意見で決定できる」ように変更されました。
このことで、より迅速な労災認定がなされることを目指しているものと思われます。
精神障害の労災認定
精神障害が労災として認定されるためには次の基準があります。
- (1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- (2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること(ただし、状況によっては6ヶ月以内に限らない)
- (3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
労務問題対策には専門家の支援を
当法人では、企業様に顧問社労士契約を推奨しております。労務・手続き・助成金に強い顧問社労士をつけることで、労務問題を迅速に解決するだけでなく、給与計算や諸手続きにかかる総務部門の間接コストを削減することができ、経営に専念できる環境を整備出来ます。その他にも受給できる助成金の提案・申請代行や各種研修の実施・最新情報提供など、様々なメリットがあります。 詳しくは、【サービス紹介】をご覧ください。
実際に顧問契約をご締結いただいている企業様の声はこちら【顧問先インタビュー】