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突然の退職に対して会社ができること

2023.05.18 コラム

  さくら社会保険労務士法人では、愛知・名古屋を中心に労務問題対応、就業規則作成、勤怠管理システム導入、助成金の提案など人事労務分野の各テーマ別ノウハウに基づいてご支援をさせていただくことが可能です。上記テーマ等でお困りの会社様は、是非一度当法人にご相談ください。

はじめに

 従業員の突然の退職は現場の穴埋め、代わりの人員の手配など様々な面で問題となります。突然の退職について会社ができる対応策について考察します。

労働者保護の法律

 一般的な認識として「退職の申し出は少なくとも1ヶ月前、できればさらに事前の申し出が望ましい」等という考え方がありますが、法律上は以下のようにさらに短い期間で退職することが保護されています。

1.民法6271項】

 民法6271項には「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する」と規定されています。近年の自己都合退職の場面ではしばしばこの条文が根拠とされます。

2.労働条件が相違した場合の即時退職】

 また、労働基準法152項によると、採用時に会社から明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができるとされています。

 

 

会社側の対抗策

1.就業規則による対抗】

 通常、就業規則などで1ヶ月前、3ヶ月前等の退職申し出期限を定めることにより対抗することになります。この場合前述の民法の規定とどちらを優先するかについては諸説ありますが、少なくとも「労働者を正当な理由なく拘束する就業規則であれば民法が優先される」と解されることが多いようです。逆に言うと、会社としては「退職の申し出は◯ヶ月前に」と定めたことに正当な理由を説明できるか、がポイントとなります。

2.損害賠償請求による対抗】

 労基法第16条において、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定められている通り、「急な退職をした場合は違約金○万円」という取り決めをすることはできません。しかし、現実に生じた損害について退職者に損害賠償請求をする」ことは認められています。過去にも突然退職した従業員に対する損害賠償が認められた下記の例があります。

【ソフトウェア開発担当従業員に関する損害賠償事件】

 パチスロ等ソフトウェア開発業務について上司から注意指導を受けた従業員が翌日自らの連絡先を削除した上で引き継ぎなしに失踪。その突然の失踪による失注や外注費など損害賠償請求を会社が起こし、480万円の損害賠償請求が認められた。裁判所は「引き継ぎを全く行わずに退職した点」で従業員の賠償責任を認め、埋め合わせの人員の外注費の一部と失注した案件費用の一部が対象となった。

 この判例によると、損害賠償による対抗においては引き継ぎ不足と損害の因果関係を会社が立証できるかがポイントとなるでしょう。

3.引き継ぎの定型化】

 退職の際の「引き継ぎ資料のフォーマット」を会社が用意し、就業規則その他でフォーマットの存在を事前に周知しておくことで「突然の退職=従業員の引き継ぎ義務違反」の事実を明確にする、と言う方法も考えられます。ただし、この方法だと「定型資料だけ作ればすぐに退職できる」と言う誤解を与えかねない他、その書類があまりに作成困難なものだと資料作成・提出を強いることが「不当な引き止め」とみなされる恐れがあるため注意が必要でしょう。

 

 

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