ツイッター社の大量レイオフ事件と整理解雇
- 2022.12.28 コラム
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はじめに
スペースXや電気自動車テスラの社長としても知られるイーロン・マスク氏がツイッター社を買収し、従業員の半数近く(7500人のうち4000人規模)を一斉にレイオフ(日本でいう解雇)したとのニュースは世の中に大きな衝撃を与えました。ツイッター日本支社においても同様の通知を受け取った社員がいるとのことですが、日本では諸外国よりも厳しい解雇規制があります。今回の事件を日本の労働法を元に解説するとともに、今後のグローバルな観点での雇用情勢を考察します。
整理解雇の4要件
ご存知の通り、日本の労働法は経営上の都合での解雇(整理解雇)を厳しく制限しています。整理解雇に正当性があるかどうかは主に以下の4要件によって判断されます。
①解雇の必要性 | 解雇が必要なほどの業績悪化があるか |
②回避努力の程度 | 希望退職募集や役員報酬減額など解雇回避努力があるか |
③対象者選定の合理性 | 対象者の選び方に合理性があるか |
④説明と協議の実績 | 説明や話し合いを尽くしたと言えるか |
今回のツイッター社の突然のレイオフは、「事前の説明や話し合いがなさそうな点」だけを取っても上記の整理解雇の4要件を満たしているとは言い難いと思われます。報道では「解雇」と言われていますが、日本における上記の解雇規制を踏まえると、今回実際には解雇でなく「退職勧奨:退職金割増や合意金を提示し退職を会社から提案する行為」である可能性も考えられます。
外資系企業と日本の労働法
グローバル企業の場合、どの国の法律が適用されるかは原則として当事者で決定することとされています。ただし、解雇規制などの重要な部分について、労働者は日本の法律を適用するよう求めることができます(法の適用に関する通則法第12条他)。この点でツイッター日本支社に勤めていた労働者はこの整理解雇4要件を根拠に戦えるようにも見えます。しかし他方で、現地法人の労働条件や人事決定権をアメリカ本社が持っていた場合、アメリカの法律(レイオフ規制が日本に比べて緩い)が適用される可能性もあるようです。今回、世界中のスタッフに向けて一斉にレイオフの通知がなされたとの報道が事実であれば、ツイッター社についてアメリカ本社に強い人事権があることが伺えます。
スピードの違い
日本と比べると、今回のツイッター社のリストラはスピード感が大きく違います。日本のリストラの場合はまず人件費以外のコスト削減をして、希望退職を募り、根回しや調整、話し合いをしなければならず、時代の変化スピードの速い現代のビジネスシーンでは遅れをとる場面が多くなるかもしれません。日本の強い解雇規制には見直しを求める議論もあり、今回の事件が一つの契機となる可能性があります。
人員削減のブームも
もしツイッター社が半数近くの従業員を解雇してもうまく業務が回り、業績が改善した場合、人件費を圧縮したい他の企業のリストラを後押しすることになるかもしれません。実際にMeta(facebook)社でも同様の話が出ていますが、I T企業以外にも「コロナによって判明した余剰人員を整理したい」という企業側のニーズは少なくないでしょう。
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