金融庁のコーポレートガバナンス・コードと労務管理
- 2025.07.24 コラム
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はじめに
昨今、政府と金融庁は上場企業を中心に、非財務情報の充実とガバナンス強化を強く求めています。
この流れを受け、「従業員給与の平均額の前年比増減率」など、人事・労務分野の可視化と情報開示への要請が高まっています。
以下、コーポレートガバナンス・コード改訂の動向と、中小企業が押さえるべき対応ポイントを整理します。
コーポレートガバナンス・コードとは
金融庁と東京証券取引所が定める「コーポレートガバナンス・コード」は、上場企業に企業統治の原則を示す指針です。
経営の透明性と公平性を確保するために、上場企業が遵守すべき事項を体系的に示しています。
開示要請の背景と内容
2025 年6月、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の中でも、コード改訂に向けての話し合いがなされています。
とりわけ、成長投資の一環として人的資本の質に注力する観点から、「人材戦略や報酬施策の方針」「従業員給与の平均額の前年比増減率等」の開示強化が示されています。
これは、従来の決算・経営戦略開示に人事施策と人件費水準を組み込み、経営判断との整合性や投資家との対話に活用する狙いがあるためです。
具体的な開示内容
金融庁の文書によれば、上場企業は以下のような情報を開示することが望ましいとされています。
単なる数値にとどまらず、「なぜ増やしたか」「どのような人材に投資するか」「どの程度の効果を見込むか」をストーリーとして補足説明する姿勢が求められます。
- ・従業員給与の平均額の前年比較
- ・増減率(例:+3.5%、-1.2%など)
- ・経営戦略や人材育成、昇給・賞与方針との関連性
- ・成長投資の一環としての報酬体系改革の具体性
中小企業の対応ポイント
こうした流れは上場企業に限った動きではありません。
むしろ、今後は非上場企業においても、「人材への投資」や「働きやすさの可視化」を示す情報整備が経営上の重要課題となります。
以下に一例を示します。
【銀行融資】
近年、金融機関は財務指標だけでなく、事業の持続可能性や人的資本への投資姿勢を含む総合的な評価を行っています。
給与水準や処遇改善方針、従業員定着率などの人事データを開示すると、融資条件や金利判断にプラスの影響が生じるケースがあります。
中小企業にとっても、人的資本に関する情報開示は「信頼される経営」を示す重要な要素となり得ます。
【求人上のメリット】
求職者の関心は「どれだけ給与がもらえるか」だけでなく、「どのような環境で働けるか」「評価やキャリアアップの仕組みは明確か」といった情報にも向けられています。
とくに若年層や専門職人材ほど、労働条件の透明性を重視する傾向が強く、職場の方針を積極的に発信する企業には、応募が集まりやすくなるでしょう。
【従業員との信頼関係構築】
処遇方針や給与制度、育成戦略を可視化すれば、公平な評価と納得感のあるキャリア形成を促進できます。
情報開示を通じて経営と現場の意識を揃えることは、結果としてエンゲージメントの向上につながり、組織としての一体感や定着率の向上にも寄与するでしょう。
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