事業場外みなし労働時間制の判断基準
- 2024.07.25 コラム
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はじめに
今年4月16日に最高裁判決が出た熊本県の元団体職員による未払い残業代訴訟について「事業場外みなし労働時間制」の適用が争点の一つとされており、注目を集めています。
「定額残業代制」と混同しがちな「事業場外労働みなし労働時間制」について解説します。
事業場外労働みなし労働時間制とは
労働基準法第38条の2による事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。
これは、直行直帰などで労働時間を正確に把握するのが難しい「外勤の営業担当」などを想定した労働時間の例外規定ですが、近年では「在宅勤務」についてもこの制度の適用対象として検討される場面が増えてきています。
事業場外みなし労働時間制の要件
事業場外労働に従事した場合、①使用者の具体的な指揮監督が及ばず、②労働時間の算定が困難なときに、事業場外労働におけるみなし労働時間制が適用できることとされています。
- 「使用者の具体的な指揮監督が及ばない」とは
これはただ事業場外で働いているというだけでは足りず、具体的に指示できない状況を指します。
たとえば、「何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合」「電話などの通信手段によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合」「事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合」などは、この要件を満たさないとされています。
スマートフォン等が普及した現代では、会社側が「外出していて使用者の具体的な指揮監督が及ばない」と主張することは容易でない部分はありますが、裁判等ではスマートフォンの有無に関わらず、「逐一具体的な指示をしていたか、都度の報告を求めていたか、いつどのように業務に就くかについて労働者の裁量がどれほどあったか」などの状況を総合的に考慮して判断されます。
- 「労働時間の算定が困難」とは
労働時間の算定が困難とは、「労働時間と非労働時間が混在していて判別がつかない状況」をイメージするとわかりやすいでしょう。
たとえば生活空間と一体になった部屋で在宅勤務をしている場合などは、勤務の途中で宅配便の受け取りや炊事洗濯などの家事をすることもあるでしょう。
そうなると労働時間と私生活時間が混在しており、労働時間算定が困難であると判断される可能性が高まります。
在宅勤務の判断基準
ちなみに次に掲げる三つの要件を満たす在宅勤務については、原則として、事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。
- ①当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
- ②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
- ③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。
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