飲食店の労務管理
- 2021.08.26 コラム
どんなにおいしい料理を提供しても、接客するスタッフの態度が悪ければ、お店の評判
はガタ落ちです。
人件費をかけたくないがために、日常的に長時間労働をさせていたり、
休憩や休日を与えていなかったりしていませんか?
飲食店において、スタッフのやる気と売り上げは連動すると言われています。
また、飲食店は一般的に離職率の高い業種であるとも言われています。
退職理由の多くは、休みがない、労働時間が長い、体がだるい、給料が安いといった
労働条件への不満です。もし近くの同業の飲食店で、「週休2日、残業なし」なんて
求人募集が出ていたら、転職するスタッフも出てくるのではないでしょうか。
忙しさにかまけて労務管理を怠っていると、優秀な人材を失うだけでなく、
店の売り上げも激減する結果となってしまうでしょう。
毎月のようにスタッフの入れ替わりがあったのでは、いつまでたっても安定した
経営の目途が立ちません。労務管理を徹底して、働きやすい職場環境を作っておけば、
いつの間にか優秀なスタッフが集まって来て、いつの間にかに売上げが上がる
仕組みができているはずです。
飲食店には、おいしい料理を食べに行くだけでなく、親しい友人や恋人、家族と一緒に
楽しいひと時を過ごすための場でもあります。そんな素敵なお店が、安易な労務トラブルで
困ることがないよう、これを機に、労働環境の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
≪飲食店でのトラブル事例≫
(1)横領の発覚
ケース1 レジに売り上げの記録が残っていない!
従業員がお客様からお金を受け取り、レジを通さずそのまま自分のお財布へ…
ケース2 仕入れたはずの食材が見当たらない!
高級食材の一部を従業員がお持ち帰り…
懲戒解雇と損害賠償請求をしたいところですが、就業規則がなければ懲戒解雇は難しく、
証拠がなければ損害賠償請求が難しいのが現状です。日頃から売り上げの管理を
きちんと行うことと、就業規則を作成して不意の労務トラブルに備えましょう。
(2)外国人労働者
最近では外国人を積極的に採用している店舗も多いようですが、採用する際には必ず、
日本で働く許可を受けているかを確認しましょう。
不法滞在や旅行ビザで日本に入国している外国人を働かせることは犯罪にあたります。
知らなかったでは済まされません。パスポートや在留カードなどで確認をした上で
採用するようにしましょう。
≪飲食店のFAQ≫
パートやアルバイトを社会保険に加入させる義務はあるの?
雇用保険の場合は週20時間以上、健康保険・厚生年金の場合は正社員の4分の3
以上勤務している場合は、加入させなければなりません。
名ばかり管理職の問題って?
役職名はついているものの、実態は管理職としての権限も与えられておらず、本来、
残業代の支払いの適用除外とされるべきではないのに、残業代が払われていない場合
のことを、いわゆる“名ばかり管理職”と呼んでいます。
労働基準法第41条第2号では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位に
あるもの」について、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用の除外が認められています。管理監督者には、労基法上の時間外割増・休日割増賃金の支払いは不要という
ことです(深夜割増賃金を除く)。
具体的には、
①経営方針の決定に参画しまたは労務管理上の指揮権限を有しているか、
②出退勤について厳格な規制を受けず自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か、
③職務の重要性に見合う十分な管理職手当等が支給されているか否か、
等が判断の目安になります。 かつて飲食店では当たり前のように「店長」が
この管理監督者該当するとされていました。
しかし最近では『店長は、その職務の内容、権限及び責任の観点からしても、
その待遇の観点からして、管理監督者に当たるとは認められない』とされ、
役職名だけで判断するのではなく、実態に即して判断することが必要となってきています。
パートやアルバイトにも有給休暇って必要?
パートやアルバイトであっても、6か月の継続勤務後は年次有給休暇を与えなければ
なりません。週30時間以上または週5日以上勤務している場合は、正社員と同じ
付与日数となり、それ以外の場合は勤務時間や日数に応じた比例付与となります。
固定残業代を払っていたのに、未払い残業代を請求されたら?
入社時に、残業代は給与に含まれているからと口頭で伝えただけでは、固定残業代として
は認められません。基本給と固定残業代を明確に分けて支払う必要があります。採用の
際の雇用契約書にきちんと明示していればトラブルを未然に防ぐことができます。
就業規則は必ず作らないといけないの?
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業所に対して、
就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付けています。
飲食店の場合、1店舗ごとが事業所となるため、各店舗のパート・アルバイトを含めた
従業員が10人以上でなければ、法律上の作成義務はないことになります。
ただし、就業規則がないとスタッフの休職や退職、解雇等さまざまなトラブルに対応できなくなる可能性もありますし、
職場のルール作りのためにも、作成しておくことをお勧めします。